2010年代

ノミン百貨店(旧国立百貨店)の内部
ノミン百貨店(旧国立百貨店)の内部

ウランバートル2015年秋  2

楽ではない暮らし向き

 

激しいインフレ・物価高

 

 建設ラッシュのほかに、今回ウランバートルを訪ねて驚いたことは激しいインフレ・物価高だ。

 ウランバートル市内を運行するバス運賃(単一)は、「社会主義」時代の1980年代、0.5トゥグルク(T)だった。90年代、市場経済移行後は、1993年10T、1997年100T、2003年200T、2015年500T。行く度に大幅に上がっている。

 12年前の2003年、1トゥグルク=約9円だった。今は1トゥグルク=約0.06円。20T札なんて何の価値もなく、100Tあっても何も買えない。2万T札が登場した。

 バス運賃が500T(30円)、新聞が600T(36円)、大きなカンパーニュパン1000T(60円)、レストランなどで外食すると1万T(600円)前後。日本円に換算すると安いが、所得額を考えると安くない。平均所得は1世帯当たり月約60万T(3万6000円)、大学講師の給料が月100万T(6万円)程度、年金は30万~60万Tだという。

 百貨店、スーパーマーケット、商店などには物があふれ、お金さえあれば何でも手に入る。だが、景気が停滞していることもあり、物がどんどん売れているという感じではない。レストランやカフェも閑散としたところが多く、大衆的な食堂やファーストフード店はこみあっていた。

 知り合いのモンゴル人は、物価が上がっても給料はなかなか上がらない、と嘆いていた。世界的な原油安にもかかわらず、ガソリンが下がらないことにも怒っていた。確かに、ガソリン1リットル1660T(約100円)は、他の諸物価と較べると高過ぎ、日本と大して変わらない価格である。

買い物客で賑わうアルドアヨーシ通り(ウランバートル西部)
買い物客で賑わうアルドアヨーシ通り(ウランバートル西部)

高齢者はバス無料

 しかし、以前よりも人々の表情に落ち着きがある。2011~13年の経済成長率は世界トップクラス、10%超だった。庶民の暮らしはまだまだ厳しく、格差が拡大したとはいえ、全体として多少は豊かになったのだろう。

 街で見かける若者はみなスマートフォンを手にし、ファッションも日本と変わらない。

 バスの車掌がお年寄りに運賃を払え、払わぬなら降りろと怒る光景を12年前見かけたが、今はそういうことはない。高齢者の公共交通(タクシーを除く)無料制度があるからだ。最初に3600T払えば、無料パスカードが交付されるという。

 一定の福祉と、今も息づく親類縁者の「助け合い」で、人々は何とか格差社会を乗り切っているというところだろうか。

 

(2015年12月)